片目の貴婦人(中編)
◎白いネコの想い出(№2)
片目というのは、思わぬところでバランス感覚に支障をきたしました。
ちょと高い場所の細い所を歩いたり、テレビの上に飛び乗ったりする時、
片足を滑らせてしまったり、
上手く乗れずに落ちてしまったりすることが何度かありました。
そのような時「大丈夫?」と声をかけたり、
思わず笑ってしまったらもう大変(ー_ー)!!
彼女のプライドが許さないのです!
スッーと姿を隠して、なかなか出てきません。
「ごめんね…」などと言おうものなら、更にプライドが傷付くようでした。
こんな時はそっとしておき、彼女の機嫌が直るのを待つのみです。
しばらくすると、何事もなくすました顔できれいな姿を見せてくれ、
「どう?反省したの?」
と私を見上げる仕草は、優雅そのものでした。
彼女の場合、プライドが高いばかりでなく、
それに伴い行動が上品で、物覚えも良く、頭の良さも抜群でした。
どんなに好物の品がテーブルの上にあっても、
上がることはなくじっと下で待ちます。
食事の時も、他の猫が夢中で食べていても決してガツガツせず、
食べ終わった妹などが彼女のお茶碗をのぞくと、
「どうぞ召し上がれ」とでもいうように、サッと譲ります。
そして、最後にゆっくり食べるのです(^_^)
たくさんの猫達を飼いましたが、
「ご飯!」とはっきり言葉にしたのは、彼女が最初でした。
私はご飯を上げるとき、必ず「ご飯なの?」と聞きます。
それを覚えて、「ご飯!」と催促するようになりました。
テレビでよく言葉を言う動物を見ますが、
彼女ほどはっきりと発音する動物は、見たことがありません。
(いつの間にか妹も真似をして、彼女ほどではありませんが
言えるようになりました)
主人の車の音を聞き分けて、
玄関まで迎えに行くことを習慣にしたのも彼女が最初でした。
犬と違い、猫は『自分が中心』のところがあり、
特によーく寝ている時などは、起きて来ません。
でも彼女は、主人の帰りが遅い日でも、どんなに寒い日でも、
玄関に座って主人を迎えました。
ちょこんと待ってるその姿が可愛くて、
「俺の帰りを待っているのは、この子だけ!」
と、主人は彼女にもうメロメロでした(*^_^*)
私と彼女が溺れていたら、主人は迷わず彼女を助けるでしょう!
(私もそうですから、念のため)
歳を重ねても、彼女の上品さとプライドの高さは変わることなく、
暖かい日の光を浴びて寝ている姿は、『貴婦人』を感じさせました。
そんな彼女に異変が起きたのは、
彼女が我が家に来て12年が過ぎた夏の終わりでした。
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